悪夢が止まらない。
毎日毎晩悪夢を見る。
今日は帽子屋さんのお茶の会を演るのに何故か特大の劇場で、しかも僕の想定していない大掛かりなセット。というか遊園地みたいだった。
舞台裏までの導線はやたら長く、なにやらスタッフが角材を運んでいる。っていうか、邪魔だ。なんだこれ。
舞台に上がるにはメリーゴーランドに乗らなければならない。グルグル回っているとゆっくり停止して、気づいたら1000人ほどの観客が。
どうやらエンタメ芝居に紛れ込んでしまったらしい。
なんとか芝居を進めようとするも、まずテーブルがない。ジェットコースターの裏に回って「机どこ!」と聞くも、指し示されたのはバラバラになった廃材。僕の机になにしやがった。
とりあえず舞台に戻り台詞を言う。
「みなさんこんにちは」
観客は大爆笑。
「私は帽子屋です」
大爆笑。
「なぜ帽子屋かと申しますと……」
大爆笑。
……。こんなにウケるはずがない。
初めからわかっていた。
これは僕を嘲笑う「大爆笑」だ……。
またもジェットコースターの裏に戻り、マイクを見つける。
そのマイクで話す。これは僕の芝居じゃない。
別の舞台に迷い込んでしまったんだ。
チケット代はお返しします……と言うが早いか、スピーカーから大音量の車のエンジン音が。うるさい! 俺が話してんだろ!
すると怪しい魔女が現れ、「あんたの声が小さいからだよ! 窓も開けてるんだから騒音がするのは仕方がないだろう?」と言う。仕方ないもんか。
いきりたって窓を閉めると、魔女は「三密! 三密!」と叫びだす。
なにを言ってるんだ。ほらみろ、観客はもうみんな帰っちまっただろ!
そして夢から覚めつつ僕はこう言う。
「劇場代は払わねえぞ……」
……人間とは、こうやって寝言を言うのだ。
ベットで横たわっていた僕が夢だとわかってまた眠りにつくと、レム睡眠はまた悪戯を仕掛けに来る。
ふと気がつくと、誰かが看板に今日の日付を書いている。
「7月28日」
まてまて。28日はまだ先だ。今日じゃない。
「そうか、これは夢か!
だって今日は15日だもん!」
…………目が覚めたら、まだ14日だった。
頼む。僕に安眠をくれ。
永遠にではない安らかな眠りを。
ではまたあした。