ぽろぽろこぼれる

888企劃主宰・馬原颯貴からぽろぽろこぼれる言葉を記録する。

ラーメンを食べた話。

替え玉(魔法)

僕は替え玉が好きだ。

 

100円の替え玉が好きだ。

心の中では「頼まないな」と思っていても、「900円のラーメンが1000円になっただけだ。実質無料でしょ」と言い訳して頼んでしまう。100円の替え玉が好きだ。

 

50円の替え玉が好きだ。

古びたラーメン屋で950円の味玉ラーメンと850円の普通のラーメンを悩んだ挙句、後者を選んだのちに「味玉より安い」と言い訳して頼んでしまう50円の替え玉が好きだ。

 

だが何より好きなのは、無料の替え玉である。

 

替え玉、二回まで無料。

とんこつラーメン「風龍」である。

自分になんの言い訳もせず、その時の空腹具合に合わせて一回でも二回でも替え玉を頼むことができる。

一口だけ残して、「替え玉、カタ」と真顔で頼む。ラーメンを食べている時の顔は真顔である。笑顔でラーメンを食べる奴なんていない。

だが心は満面の笑みである。

30秒経って、「おまち」と皿が現れる。またも真顔で「どうも」と受け取る。替え玉を受け取る時に笑顔になる奴なんていない。宇宙が始まってから今の今まで、そしてこれからも、そんな人間は現れない。

当然、心は満面の笑みである。

しめた。無料の替え玉だ。見たか。これが替え玉だ。日本の文化だ。七草粥がどうした。わびさびがなんだ。替え玉だ。替え玉こそが日本の文化なんだ。クールジャパンなんて知ったことが。熱々のラーメンにカタめの替え玉。これが正義。日本のジャスティス。二回しても一回しても無料は無料だ。あえて一回残して店を出るのも粋ってもんだ。

 

外に出ると霧雨がコンクリートを濡らしている。僕は気づいた。また言い訳してしまった。替え玉が無料だからと、深夜にラーメンを食べてしまった。猛省。